5Gハムレットの感想まとめ


5Gハムレットの円盤が届いたときに書いた日記です。

現場で観るには不安の残る情勢だったこと、そして何より私が岡宮来夢くんを今ほどの情熱で推していなかったため、当時は配信で視聴しました。

千秋楽を視聴した際の感想メモをみると、『くるむくんの陽の気がすぎるのか、悲しみに溺れて狂っていくというよりも悲嘆と狂気の中で自分の役を全うしようとした悲劇の主人公ってかんじだった』って書いてました。

私はほかのハムレットを知らないし、戯曲本を読んだこともないので理解が浅いのですが。
ハムレット岡宮来夢くんというキャリアの浅い若い役者のフィルターを通して観たからか、エディプスコンプレックスと性愛への嫌悪を抱えた思春期男子として解釈するに至った作品でした。

たびたび描かれる復讐への葛藤とか、復讐を遂行できずに他者を死に追いやったことを後悔し正当化していくくだりとか、まさしく思春期って感じがしてしまうのです。
まだ地に足がついていないときにしるべを失って、感情を認知できず、責任を負えず、目の前に吊るされた天命らしきものにすがっている悲劇の主人公、というか。
パンフレットは視聴後に購入したので読んでびっくりしたんですけど、くるむくんも16歳説を採用して演じたって言ってたましたね。

改めて観てささったのが、クローディアスが懺悔し、ハムレットが復讐をためらうシーン。彼は父の亡霊に諭されたことで憎悪の感情を高め、救済の余地の入り込まない死を与えようと決意を深める。
このシーンが、すごい、くるむくんの演技も相まってすごい心に刺さりました。
まだキャリアが浅くて若い岡宮来夢くんが、狂気と悲嘆が足りないからこそ、若さゆえに父という指針を失って暴走するさまとして描かれている、ように受け取りました。
それによってハムレットにもクローディアスにも、魅力を感じられました。兄を殺して王座や后を奪ったことに対する罪悪感を抱くクローディアスは人間らしいし、復讐を正当化しようともがくハムレットも青臭くて、人間らしくて、愛おしくなる。

くるむハムレットを見ていると、この子は友達とも恋人とも想い合っていて、おそらくあの日亡霊を出会わなければ、復讐に身をやつすことなく時と共に悲しみを癒やして良き王になれたのでは…と思ってしまうんですよね。

くるむくんの最大の特徴なのかもしれない。親しみやすくて理解がしやすいキャラクターに落とし込んでくれるから、感情移入しやすいし
演じたキャラクターがとても愛らしく見えてしまう、っていう。すごくない?すごい武器じゃん…(推し全肯定オタク)

ポローニアスを刺し「おやすみなさい母上」と歌うシーンでも涙が出てきました。
すごい、なんだろう、無邪気なまま狂ってしまった薄寒さがあった。彼女は母親として徹底的に間違えているけど、それでも、息子の狂気と苦痛を目の当たりにしたときの悲しみもまた真実ではあるよなあ、と。
くるむくんに色気がないことが良い方に作用してたのか、色気あるガートルードに馬乗りしてもいやらしさは微塵もなくて、母親の不貞を嘆く息子そのものに見えました。それで涙が出たのかもしれない。あまりにも、ハムレットがかわいそうで。

あとオフィーリアが死ぬシーンも泣きました。
ほかのハムレットを知らないので理解不足を承知で書きますが、オフィーリアとホレイショーのハムレットへの想いは丁寧に描かれてた気がする。演出脚本の松崎さん独特の解釈なんですかね。
そこがまたハムレットの悲劇を引き立てているように思えて好きです。だって絶対、復讐に囚われなければ幸せになれてたもん、くるむハムレット

この5Gハムレットはだいぶ入門編的というか
総論的な作りなんですかね。
私も今はこの程度の理解だけど、そのうちどんどん理解が深まっていって、そのとき歳を重ねた岡宮来夢くんが再びハムレットを演じてくれたら、どういう気持ちになるんだろうな、ってすごく楽しみになりました。
そういえばくるむくんも月記で言ってたね、今すぐになれなくたってさ、ちょっとずつでいいじゃんね。って。たのしみ!